丸重城の人々~前編~
「なんで?」
「柚希言ってたじゃん!
いつも俺達が同情して傍にいるって言われるって。
その度に、不安で苦しんでたんだろ?」
「どうだろうな…でも、俺達が出逢った時既に、柚は恐怖症だったろ?
どっちにしても、俺達誓ったじゃん!俺達で克服させてみせるって!」
「あぁ。そうだな…!
でも許せねぇな、あのホステス…」
「あぁ。明日わからせなきゃな……」

絶対に赦さない。
兄弟は心に黒い炎を燃やしていた━━━━━。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「おはようごさいまーす」
元気よくこちらへ寄ってくる、ホステス一行。
朝から化粧もバッチリだ。

「おはよ」
「おはよう…ございます…」
「………」
大翔と中也は無言で椅子に並んで座っている。
柚希は響子と手を繋ぎ、並んで座っている。
「そっちに座って」
響子がホステス一行を、向かいの席に座らせる。
「はぁーい」
「失礼しまーす」
「食べよ!」
「はぁーい」
「うん…」
震える手で、箸を持つ柚希。
「柚希?大丈夫?」
「うん。平気」
そんなことお構いなしに、ホステス達は大翔と中也に次々と話しかける。

「大翔さんって、仕事してるの?」
「中也くんは?」
「あ、サラダいれようか?お皿貸して?」
「何飲む?」

「あのさ!」
「え?」
「あんた等うるさいよ!耳いてぇ」
唐突に中也が言う。

「柚」
「え?」
「こっちおいで?」
大翔が、自分と中也の間をポンポンと叩く。
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