丸重城の人々~前編~
「ねぇ…
大翔も中也くんも見ないで…。
恥ずかしい……」
「いいじゃん!柚希の料理姿とか貴重だし!」
「柚、可愛い…」
柚希の調理を、カウンターで頬杖をついて見てる大翔と、両肘をついて見てる中也。
「二人とも夕食抜きにするよ?」
「は?なんで?」
ハモる、兄弟。

「そうね。それがいいわね!」
ソファーで、紅茶を飲んでいる響子が言った。
「だから!なんで俺もなんだよ!?中也だけなしにしろよ!」
「はぁぁ?兄貴だろ!?」
「どっちもよ!あんま見るといくら二人に慣れたからって、怖がるわよ…?」
「そうなの…!震えるから、お願い…」
「じゃあやめる。おい!中也、俺等もソファー行くぞ!」
「へーい」
「ふぅ…」
再び調理を再開する、柚希だった。

「……出来たよー」
柚希の声に、みんなテーブルに座る。
「………」
「……柚希、これ何?」
三人の視線が止まる。
「へ?
大翔が犬で、中也くんが猫で、響ちゃんが熊だよ!
で、私が鼠」
柚希がオムライスを作り、ケチャップで動物の絵を書いていた。
「プッ!
柚希、可愛い~。これでも年上かよ!」
中也が爆笑している。
「そこまで笑わなくても…大翔も!」
大翔は声をころして堪えきれないと言う風に、お腹を抱えている。
「もう!酷い!結構上手く出来たのにぃ!」
「フフ…早く食べようよ!」

「いただきまーす」
< 57 / 162 >

この作品をシェア

pagetop