森守の令嬢はもふもふ大型獣人に執愛される
 生きるか死ぬかの瀬戸際なのだ。
 獣人だって、構っていられないだろう。

(まさに今、多大なる誤解から僕が敵視されている状況なわけだけど)

 助けを求めるようにリディアを見ても、鋭い牙を剥き出しにして威嚇してくる、怖い山猫男が睨み返してくるだけだ。エディ恋人作戦の言い出しっぺである彼女は、目の前の美形山猫に夢中で話にならない。

「恋人である君には失礼なことかもしれない。だが、彼……ルーシスにもチャンスを貰えないだろうか? 彼は、リディアさんに恋をして、命をかけてここにいる。それは、生半可な覚悟ではないのだ」

 ジョージの演説に、エディは「でしょうね」としか言えなかった。

 だって、あまりにも荒唐無稽すぎる。

 いっそ、この二人は美形に弱いリディアを騙すためにやって来た詐欺師なのではないかと、疑いを持つ方が簡単だ。彼女を騙す理由なんて、見つからないけれど。
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