森守の令嬢はもふもふ大型獣人に執愛される
(……って! 勝手にドキドキするなよ、僕の心臓!)

 恥ずかしいな、とエディは唇を尖らせた。

 本当に、困る。

 エディには、これと決めた使命があるのだ。

(おばあちゃんが見つかるまでは、恋なんてしている暇なんてない……はず、だよね?)

 とはいえ、エディのために獣人になった魔獣さんは、そんなことお構いなしに彼女の心をグイグイ揺らしてくる。

 今だって、名前を呼んで欲しそうに、甘く乞うような、期待に満ちた目で見上げてきていた。

 エディは「あぁ、もう」と口の中で呟いて、やけくそみたいに「ロキース」と彼の名前を呼んだ。

 名前をただ、呼び捨てで呼んだだけ。

 それだけなのに、ロキースの無表情に近い顔がとろりとほころぶ。
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