【完】桜色の君を抱きしめたい
ガラガラ

「兄貴いるか?...おっ、いたいた。ってお前までなんて顔してんだ!?」

貴斗の声に気付いて顔を上げた凪。その目は少し赤く腫れていた。

「貴斗か。俺はもう、佐伯さんと両想いになるのは難しそうだ...」

「何があったんだよ?アイツも泣いていたし...」

「俺が泣かせた」

「は?何言ってんだよ」

凪は立ち上がり、もう一度貴斗の方を見て言った。

「俺が佐伯さんを泣かせたんだ。だからもう、お前に任せるよ...」

「ざけんな...!」

ガッ!

貴斗は凪の胸ぐらを掴んで壁へと押し込んだ。

「くっ...!ふざけていない。本当の事を言っただけだ。俺は佐伯さんに無理やり触れて、泣かせた。だから俺はもう、彼女の目には俺が映らない。だから貴斗、お前に...」

「そうじゃねーよ...!兄貴、俺だって我慢出来なくて無理やりアイツに触れる事がこの先絶対あるし、泣かせるかもしれない。いつかは俺の事もアイツの目には映らない事なんて百も承知だ。でも、だからって俺に任せるだ!?そんな事で諦めていいのかよ!そんなに軽い気持ちでアイツの事が好きだったのかよ...!好きなら最後まで好きでいてやれよ。自分の気持ち簡単に捨てるなバカ兄貴...!!」

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