【完】桜色の君を抱きしめたい
「それはそれでいい思い出じゃないか。あんまり気にすんなって」

「ちくしょう...!」

下を向いて拳を握り、涙を流しながら悔しさを堪えた貴斗。その頃凪は飲食店の仕込みをしていた。

「飲み物はこれでよし!後は...」

「横田くんこっちは終わったよ」

クラスの女子が凪に報告しに来た。

「ありがとう。これで全部終わったから後は開会式まで休憩しようか」

準備が終わって椅子に座ってまったりしていると凪にある話を持ちかけてきた。

「ねぇ横田くんってさ、一年生の佐伯さん?だっけ。あの子とよく居るよね」

「ああ。佐伯さんとは図書で一緒で。それがどうしたの?」

「前にさ、一年の女子で揉め事あったでしょ。その佐伯さんに危害加えた女子達が最近、この辺りにいるみたいでさ」

「確かまだ停学だったよね。それがどうして学校近くに...」

その時凪は嫌な予感がしていた。

「これ、聞いた話だからあまり根拠はないけど横田くんには伝えておこうと思って。何かあってからじゃ遅いし」

「教えてくれてありがとう。佐伯さんには演劇に集中してほしいし、それに、もうあんな思いさせたくないからね」
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