木村さんと蛇
『えっ、いきなりですか?あの、やっぱりもう少しだけ時間を…』
『だーめ。雪菜ちゃんはすぐに引っ込み思案になるから直ぐに捕まえます!そうやって、いつか、いつかってしていたらそのいつかはやってこないよ。だから、今日から私の事は冨岡さんじゃなく、舞って呼んでね』
強引な提案だけど、いつまで苗字呼びじゃなんだか線引きをされているみたいでいやだ。
『えっと、それは、ちゃん付けでも良いですか?』
私のゴリ押しに、オドオドしながら上目遣いで見つめてくる雪菜ちゃん。できれば、呼び捨ての方が距離が縮まっている感じがして嬉しいけど、あまりにも強引に事を進めて、嫌われたらいやだから、
『じゃあ、ちゃん付けていいから今日からは下の名前で呼んでね』
そう言ってニコッと笑うと
『う、うん、ま、舞ちゃん』
雪菜ちゃんが頬を赤らめながら名前を呼んでくれた。
『なーに、雪菜ちゃん』
そうやって呼び返すと、雪菜ちゃんは更に顔を赤くする。それがなんだか可愛くて、私は雪菜ちゃんを背後から抱きしめて、雪菜ちゃん、雪菜ちゃんって呼び続けた。
周りは私達を不思議そうに見ていたけど、私はただ、ただ、雪菜ちゃんと少しでも距離が縮まり嬉しくて、また上昇していく雪菜ちゃんの体温に何故か胸がこそばゆくなった。
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早乙女桜は、普通の人には見えない物が見える。 それに気付いたのは小学生の時だった。 初めて見たのは無数の色とりどりの蝶々。 桜は当然、みんなにも見えていると思っていたが、桜以外誰にも見えなかった。 戸惑う桜と無数の蝶。 桜の前に現れた無数の蝶々はある事件を起こし桜にとって初恋の少年に大怪我を負わせてしまった。 桜は自分を責め、自分がこんな不気味な蝶々を発見してしまったから、彼が酷い目にあったんだと自分で自分の右目を刃物で傷つけようとしたが、事件現場にいた刑事によって阻止された。そして、刑事は言った 『君が見えるのはそんなおかしな事じゃない。ただの体質の問題だ。だから、その体質が許せないなら、体質を利用してバケモノから人々を守ってみろ』 その言葉をかけられて、8年の月日が流れた。 高校2年生になった桜は昔より明るく、凛として、怪異と向き合っていた。

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