光を掴んだその先に。




「那岐は、甘いもの好き?」



誕生日といえばケーキだ。
これはもう誰もが思い描くもの。

「お祝い=ケーキ」なんて公式が誰にも刷り込まれているくらいに。


明日の帰りに買ってこよう。

那岐は当分のあいだ送迎には来られないらしいから、それは逆にラッキーだ。



「そこまで食わねえな」


「え。」



捨てちまえ公式。

そんなサプライズは、こんなにも簡単に砕け散った。



「甘いもの好きじゃない…?」


「好きじゃねえってより、昔からそういうモンはあまり食ってない」


「け、ケーキとか…」


「あー、食わねえな」



絶望的だ……。

お祝い=ケーキという公式なんかこの世に存在しなかったんだ。



「お菓子、食べないの…?」


「滅多に」


「アイスとかも?」


「…それは好きだ」



適当に質問していったらまさかの好きが出た。

アイス……ケーキ……アイス、…ケーキ………。


───あ!!!



「本当にっ!?覆さないでよそれっ!明日までアイス好きでいてね!?」


「…好みっつうのは1日で変わるモンなのか」


「那岐はそんな感じするからっ!」


「俺はそんな優柔不断に見えてんのかよ」



そういうわけでもないけど…。

でも意地悪なとこあるから、「忘れた」なんて言って無かったことにもされそうだ。



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