光を掴んだその先に。




「じゃあやっぱりショートパンツに戻そうかな…」


「それは駄目だ。着物でいい」


「着物はこの季節暑いの!」



似合わないなら似合わないってハッキリ言ってくれたほうがいいのに。

でもそれもそれで、たぶんすっごい落ち込むけど。



「着替えてくるから待ってて!」


「着物にだぞ」



ごめんね雅美さん。

このワンピースはもう少し大人になってから着ようと思う。


雨ばかりつづく梅雨時期。

日中は蒸し暑さが主張してきて、遠くからセミの鳴き声も聞こえるようになった。



「着替えてきたよ!これね、前に買ったやつ!」


「…なんでそうなる」


「えっ、これも駄目!?」



次現れた格好は、ショートパンツにノースリーブTシャツ。

これが私の中でありふれた私服。
Theノーマルって感じ。

動きやすいし涼しいしラクでいいけど、本当はさっきみたいなワンピースをずっと着たかったのに…。



「露出しすぎだろうが。ここをどこだと思ってんだよ」


「え、天鬼組」


「男は全員野生の猿だと思っとけ」



確かにここは男ばっかりで、女がいるほうが珍しい。

でも猿って……。



「那岐も猿なの?」


「…知らね」


「えぇ教えてよっ!猿なの?でもなんで猿?猿かわいいのに!!」


「可愛いわけあるか」


「───わっ、暑い…!!」



ボスッと投げるように被せられた黒色のスーツから、ふわっと大好きな香り。



< 210 / 349 >

この作品をシェア

pagetop