光を掴んだその先に。




そのファイルを誰にも見られないように物置部屋の奥に隠して、ビデオカメラを片手に部屋を出た。


ここにも必ず那岐のぜんぶが入ってるはずだ。

でもそれを観ちゃうと情報が多すぎるから、これは今じゃない。



「那岐…っ、」



けど、私の目の前にいたのは。

彼の部屋へと向かった私の足が直前で止まってしまったのは。

これはデジャヴのようなものだ。



「っ…、」



息を殺すように物陰に隠れる。

まるで雅美さんのときのように。
でも、雅美さんとはまた違う。


私と変わらない歳の頃の女の子は背伸びをするように、彼の襟を両手できゅっと掴んで引き寄せていて。

それは私が憧れていたもので。

いつかそんなときが来たらいいなって、そう思っていたもので。



『……ねぇ陽太。婚約者って……き、キスとかするの…?』


『あったりまえだのクラッカー』



そんなクラッカーが目の前で繰り広げられていたから───。



「…なに、してる」


「私は謝りません。だって、ここまでしないと絃織さんは私を見てくれませんから…」


「…おやっさんのために、組のために俺はお前と関わってるだけだって言っただろ」


「…それも知っています」



どうしてもっと突き放さないの。

いつも乱暴に言うみたいに、キツい言葉を言えばいい。


那岐は───…優しすぎるよ。



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