光を掴んだその先に。
怖いとかじゃなかった。
そのとき私の心を埋めた感情はそうではなくて、彼にとっての光になれるはずがないって、そんなふうに思ってしまった。
「なんにも…わかってなかった……、」
なにが冒険の書だ。
なにが好き、だ。
表面の綺麗な場所ばかりを見て、あの人のこと、私は何ひとつ知らなくて。
いつも守られて守られて、守られて。
『お前は俺の光だ。光なんだ、出会った頃からずっと───…』
ちがうよ那岐。
那岐ばっかりなんだよ。
私は何もしてないんだよ。
私はいつも、いつも、あなたが泣いているところを下から眺めているだけだった。
「なんにも、できなかった……っ」
あんなにも小さな身体で、小さな手でいつも私を抱きしめてくれて。
いつも優しさをくれて。
それなのに一番辛くて苦しいのは、いつも那岐だったはずなのに。
泣いてるあなたに手を伸ばすだけで拭ってあげれたことなんかない。
大罪人の息子って、桜木に言われてた。
その意味はきっとこれだ。
那岐が自分のことを話さなかった理由も、これだったんだ…。
「いかなきゃ、…那岐に伝えなきゃ、」
ありがとうっていっぱい言わなきゃ。
たくさん伝えなきゃ。
だって14年だ。
14年も私たちには壁がある。
また会えて1年しか経ってないのに、私はいつも那岐に貰ってばかりだ。