１０憶で始まった結婚は○○だった

　新緑が暖かく輝き、心地よい太陽がキラキラしている晴天の中。
　いよいよティケルの結婚式の日がやって来た。


　お城の大きな門が開き、ティケルの結婚相手が父親のぺリシアと共にやって来た。

　黒色の乗用車で大きさは１２００ｃｃ程のシンプルな車。
　窓にはスモークが貼ってあり中は良く見えない。

　運転しているのは黒服の中年男性で、雇われている運転手のようだ。



　玄関までの道のりをゆっくりと走ってくる車。



　お城の玄関には数名の女性の使用人と、黒いスーツに身を包んだ初老の男性が待っていた。


　車がやって来て玄関の前で止まった。

　運転手が後部座席に回りドアを開けた。


　降りてきたのは、紺色のスーツに身を包んだ優しそうな彫の深い顔立ちをした50代を過ぎたくらいの紳士。
　スラっと背が高く、メガネをかけきりっとした表情をしているが、とても優しい目をしている。

　この男性が父親のぺリシアである。


「お待ちしておりました」

　黒いスーツの初老男性が歩み寄ってきて、丁寧なお辞儀をした。

「初めまして、私は長年お城に仕えております執事のブッドルと申します。どうぞよろしくお願い申し上げます」

　丁寧な口調で挨拶をされると、紳士はニコっと微笑んだ。

「初めまして弁護士のぺリシアと申します。この度は、素敵なご縁を頂きまして有難うございます」

「いえ、こちらこそ」
　
　
　ぺリシアがそっと、後部座席に手を差し伸べた。

　その手を取り、ゆっくりと後部座席から降りてきた女性…。


「初めまして…」

　澄んだ綺麗な声で挨拶をされ、ブッドルは息を呑んだ…。


　降りてきた女性は、随分と背が高く１７０ｃｍはありそうな大柄で、やせ型。
　綺麗なブロンドの髪は短くショートにしていて、シャープな輪郭にプルっとした魅力的な唇…スッと筋の通った高い鼻…。
　
　だが…
　目を見ると、左目に眼帯をあてて痛々しい姿。
　見える右目は綺麗な切れ長の目で、瞳は澄んだ紫色。

　俯き加減で小さくなっている女性だが。
　どこか…誰かに似ているような気がする…。


「…名前を名乗る事が遅くなり、申し訳ございません…。私は、ファリサと申します。…父と同じ弁護士です…」

　ブッドルは驚いた目のまま頷くしかできなかった。

　着ている服は黒っぽいスーツで、スカート丈は膝下。
　履いている靴はかかとの低い黒いパンプス。

　この人が何故、結婚式まで顔を見せないで名前も名乗らなかったのか…。
　その理由をブッドルは何となく感じ取っていた。


「お待ち申し上げておりました。ご案内致しますので、こちらへどうぞ」

　気を取り直してブッドルがぺリシアとファリサをお城の中へと連れて行った。