10憶で始まった結婚は○○だった
 お城の中に入ると、ぺリシアは参列者の為大聖堂の控室へ案内され、ファリサは式の準備の為に更衣室へ使用人により連れていかれた。




 大聖堂控室に来たぺリシアは、そこにいたサーチェラスに挨拶をした。

「初めまして国王様。結婚式まで、お会いする事をしなかったご無礼をどうぞお許し下さい」

 深く頭を下げたぺリシア。

「初めましてぺリシアさん。どうか、頭を上げて下さい」

 ニコっと笑ったサーチェラス。
 結婚式故に正装して、紺色のモーニングに身を包んでいるサーチェラス。
 とくに気取る事なく、初対面のぺリシアに気軽に話しかけていた。


 言われてぺリシアは頭を上げ、サーチェラスをじっと見つめた。

 サーチェラスもじっとぺリシアを見つめた…。


 ぺリシアは珍しい紫色の瞳をしている。
 だが、その瞳にどこか見覚えがあるとサーチェラスは思った。


「国王様。とても御無礼な条件を受け入れて下さったお心遣い、とても感謝致します」
「いいえ。あの、もしかして何か深いご事情でもあったのではないですか? 」

 そう尋ねられると、ぺリシアは一瞬だけ厳しい目をした。
 だがすぐに笑顔を浮かべた。

「いいえ、ただ…娘は弁護士ですが国選弁護人でして。被告人の弁護をしておりますので、騒がれてしまうと色々と問題が発生する為、結婚式まで会わない写真も見せないという条件を出させて頂きたまででございます」


 何か違う。
 今の言葉にはどこか嘘がある。
 サーチェラスはそう感じた。

「そうでしたか。それは確かに言えておりますね。お仕事上、何かと大変そうなご様子ですね」
「はい、今はもう辞めておりますので何も問題はございません。ふつつかな娘ではございますが、どうぞ宜しくお願い申し上げます」

「はい。こちらこそ、息子のティケルをどうぞよろしくお願いします。ティケルは養子でして、あまり私が構ってあげられなかったので結婚して早く幸せな家庭を作ってほしいと望んでおりました」
「そうですか…。国王様は、ずっとお一人でいらっしゃるのですか?」

 そう尋ねたぺリシアが、眼鏡の奥でちょっと厳しい目をしていた。

「はい。私の妻は永遠に亡くなったミネルだけですから」

 笑顔を下でちょっと悲しそうな目をしていたサーチェラス。

 ぺリシアは少しだけ辛そうな目をしていた…。


「あの、ぺリシアさん。お嬢様のお名前を、教えて下さい」
「ファリサです」

「ファリサさんですか。素敵なお名前ですね。お嬢様がティンケルと結婚するのですから、ぺリシアさんも私の家族と同じです。何かあればいつでも、お声をかけて下さいね」
「はい、有難うございます」


 コンコン。

「国王様、結婚式が間もなく始まります」

 使用人が呼びに来た。

「では行きましょうか、ぺリシアさん」
「はい」

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