天才か、狂人か。     ~変 態 化学教師、野球部の監督にさせられる~


みんなで校歌斉唱している間、

一塁側ベンチ前で整列していた愛工大 名錬の皆さん・・膝に手をついて、

こみ上げてくるものを我慢できずにいた。


ただ一人・・・上原君だけは、

仁王立ちのまま・・ずっと誰もいなくなったマウンドを見つめていた。



「礼・・!」
「「「ありがとうございました。」」」


校歌斉唱が終わって、みんなで三塁側スタンドの応援席へ挨拶に行った時、


キャプテン中村くんの声量も、
お辞儀をするみんなの声量も、

いつもより小さかった。


延長15回を戦い抜いた疲労があったのも勿論だと思うけど・・

どこかみんなの様子からは・・

【勝負に負けて、試合に勝った】

そんな心の声が現れていた。


チームとして、3安打2得点。
そのうちの1得点は“他力”で取った点。

自力で取ったのは、
立浪くんのホームランのみ。


阿部先生は[守り勝った]と表現してくれたけど・・



<・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・。>



泣き崩れながら引き揚げていく愛工大名錬の皆さん。

その中で・・決して俯くことなく、
弱い姿を見せることなく、

最後に両頬へ一筋の涙を光らせて、フィールドを去っていく相手の背番号1に・・

みんなが脱帽していた・・・。


















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