あの日の恋は、なかったことにして
「トイレ行ってきまーす」
「は? おま、30分前にも行かなかったか?」

 ディレクターの小暮さんから突っ込みが入る。

「女子にはいろいろ事情があるんですよー」

 私はそう言って、かまわず逃亡。
 背中に冷たい視線が飛んで来るのを感じるけど、気にしない、気にしない。

 まったく、息が詰まるわ。
 会社勤めって、つくづく私に向いてない。


 トイレでメイクを直していると、スマホにメッセージが届いた。

『今週末、暇? ○○総合病院の医者と合コンあるんだけど』
「OK……と」

 速攻で合コン仲間に返信する。

 このビルの総合案内をしている美人受付嬢は、いつもオイシイ話を持ってきてくれる。
 こういうメリットのあるお友達は大事にしないとね。
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