お願い、あと少しだけ
その日の業務が終わり、奈緒子は桜新町駅前のスーパーでささっと買い物をして、アパートに向かった。今日は、エビマヨにしよう。帰ったら、弘樹にメッセージしようかな。

アパートのドアを開けたところで、メッセージ着信音が聞こえた。買ってきたものを冷蔵庫に入れて、急いでスマホを見る。

【奈緒子、おかえり。今日もスーパーの総菜の夕食だよ。早く奈緒子の手料理が食べたいな。】

週末には、会える。・・・と、金曜日、弘樹は歓迎会とかないんだろうか。

【週末には、調理器具とかお皿、買いに行って料理できるよ。明日の夜、でいいんだよね?】

【ごめんっ、奈緒子、明日は歓迎会なんだ・・・だから、ちょっと不安かもしれないけど、終電で来てくれるかな?0時ちょい過ぎに着くはずだから、それまでには引き上げて迎えに行くよ。・・・大丈夫そう?】

弘樹の、1日でも早く会いたい、の気持ちが伝わってきた。私もだよ、弘樹。

【うん。終電で行くね。到着ホームの一番前で待っててくれる?夜中に1人で歩き回るの不安】

【もちろん!】

そうだ、佐川部長と服部部長のことを話しておこうか。

【あのね・・・話は変わるんだけど】

【何?】

【佐川部長が・・・確信ではないんだけど、服部部長のことまだひっかかってるみたいなの】

【そうなんだ。服部部長もだよ。僕らで2人のために何か出来ないかな】

【う~ん。】

【奈緒子が大阪に来てから、佐川部長に大阪支店に来てもらう口実、何かないかな】

【私の働きっぷりを見に来てもらうとか・・・苦しいか】

【それと、僕から佐川部長に直接お礼を言いたいから、とかだね。プライベートになるから、佐川部長には有休を取ってもらわなきゃだけど】

【送別会の時、それとなく聞いてみるわ】

背後にある『目的』に気づかれなければいいけれど。

【詳しいことは、土曜の朝に話そう。金曜の夜は、いっぱい奈緒子を見つめたいから】

見つめるだけ、なの?その先は・・・?

【うん。じゃあ、そろそろ、夕食作り始めるね。また、寝る前に】

【あぁ。】

明日、弘樹に会えるのが待ち遠しい。早く会って、抱きしめて、キスして、そして・・・。

考えていたら、身体が火照ってきて、まずいまずい、平常心に戻ってゴハン作らなきゃ、と思った奈緒子だった。





< 48 / 53 >

この作品をシェア

pagetop