ちよ先輩のてのひらの上。


……怖い、のかな。
自分でも、よくわからないけど……。

ちよ先輩のことを好きな気持ちは、変わっていない。

だけど同時に、先輩に対して不安な気持ちを抱いているのも、確かで。

今すぐここから逃げ出したい。

ちよ先輩の口から、次にどんなことを告げられるのか、怖くてしょうがない。


……あ、そっか……。私、やっぱり怖いんだ。

先輩から、決定的な言葉を告げられるのを、恐れている。

……向けられている感情の正体を知るのが、怖くて仕方ないんだ。


「……まあ、当たり前だよね」


黙っている私に、先輩は微笑を浮かべた。

けれどそれは、少しだけ寂しそうなものだった。


「騙すようなことしちゃったし……、怖い思いも、嫌な思いもさせちゃったよね」

「……」

「ちゃんと謝らせてほしい。……本当に、ごめん」


何度目かの謝罪の言葉に、私は戸惑ってしまう。

目の前のちよ先輩は、普段とちっとも変わらなかった。

悪い人には見えないし、私に悪意を持っているようにも見えない。

……なんていうのは、もしかしたら私の、願望かもしれないけど。


「……真白ちゃんの言う通り、ロッカーに写真が入った封筒を入れたのは、俺なんだ」


改めて告げられる現実に、息が詰まる心地がした。

覚悟を決めて、目を伏せる。


「だけど——あの写真を撮ったのは、俺じゃない」

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