ちよ先輩のてのひらの上。


恐る恐る目だけを動かすと……、向けられているたくさんの視線に、一気に羞恥が全身を駆け巡る。

——私とちよ先輩は、3年生たちの注目を痛いほどに浴びてしまっていた。


ほんとに、み、見られてる……っ!

気づいた途端、騒ついた周囲の声を、耳が思い出したように拾いだして。ボワッ、と湯気が出たんじゃないかというほど、体温が急上昇した。

そんな固まる私の手を引いて、ちよ先輩はすぐ近くの生徒会室へと逃げ込んだ。


「……やっちゃった。周りのこと、すっかり見えてなかったな」


ちよ先輩が困ったように呟いた。

ふう、と息をついてから、


「たぶん、すぐにバレるだろうから」


ガチャリと鍵を閉めた。


——えっ。


「あ、あの……っ」


閉じ込められるような状況に不安を感じて、慌てて扉に駆け寄った。

すると、先輩がそこを隠すように立ちはだかる。


「だーめ。俺の話を聞いてくれるまで、逃がさないよ」

「そ、そんな……」


困ったように見つめると、先輩が伺うように首を傾げた。


「やっぱり、……俺が怖い?」


訊かれて、私はつい、目を泳がせる。

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