甘やかし上手なエリート医師に独占溺愛されています

先生はスーツのポケットから小さな濃紺の箱を取り出すと、私の抱いているウニを少し恨めしそうにツンツンつつく。

「コイツのおかげでこの前のデートで渡しそびれたんだ。受け取ってくれる?」

差し出された箱をおずおずと手に取って開くと、中には四つ葉のクローバーをモチーフにしたピンクゴールドのピアス。

「ウニ以上に喜んで貰える自信がなくて、渡せなかった」

先生が苦笑する。

「これ…」
「皮膚科も形成外科も専門外だけど、ピアスくらい痛みなく開けてあげられる」
「…先生」

驚いてピアスを見つめたまま固まる私の耳に、先生の指が触れる。


「俺に、君の運命を委ねてくれないか」

先生は覚えていてくれたんだ。
私が信さんのお店で話した他愛ない会話を。

『ピアスを開けると運命が変わる』

そんなただの都市伝説のような迷信を、私は何となく信じていた。
開けたことで何かが変わってしまうのが怖くて、それなら『運命を変えられてもいい』と思える人に出会ったらにしようと漠然と思っていた。

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