△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~




 少し前に、剣杜が食事会の予定を連絡してくれたのを、虹雫はすっかり忘れてしまっていた。2人に会うのをいつも心待にしているので、忘れたことなどないのに、どうも沢山の事が一気に押し寄せてきていて、いっぱいいっぱいになってしまったのだろう。


 「いつまで経っても待ち合わせ場所に来ないし、メッセージを送っても既読にならないから心配して職場に来てみたんだ。始めに、自宅に行かなくてよかったよ」
 「……ごめんなさい。忘れてしまってて………」
 「いいさ。気にするな」
 「何かあったのか?」
 「えっと……その……」


 心配そうに顔を覗き込む、優しい宮と剣杜。
 本当に彼らは自分に優しすぎる。

 小説の出版の話。一条の事を話したくなってしまう。相談してもいいのだろうか。忘れると約束していたのに、自分から破ってしまったが、それでも夢を諦められなかったと伝えたくなってしまう。
 虹雫が迷い、口を開いた後に迷い唇と閉じる。そんな虹雫を見て、宮はポンポンと頭を撫でる。


 「仕事終わる?」
 「うん。今日は終わりにする」
 「わかった。じゃあ、どこか食べに行こう。剣杜が奢ってくれるって」
 「は?なんでだよ……。まぁ、いいけど」
 「ふふふ。ありがとう」
 「その代わり、話聞かせろよ」
 「………わかった」



 剣杜は言葉では強いものの、表情は柔らかい。本当は心配してくれているのがわかる。
 これは逃げられないな。と、思いつつもやはり相談してもいいのだろうか。
 もう、あの小説は諦めてしまおうか。そんな風に思ってしまっている虹雫を2人はどう思うだろうか。

 これで本当に忘れられるのなら、夢を叶えられるのならば、それでいい。
 もう虹雫は諦めるのが楽だと思ってしまったのだ。




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