△は秘密色、○は恋色。~2人の幼馴染みを愛し、愛されてます~




 そんな軽口をたたき合いながら本屋に向かった。近くに大型の本屋があったので2人は迷わずそのビルに入った。小説のコーナーに向かった虹雫は、すぐに新刊コーナーに向かった。そこでお目当てのものがあったのか、そこに目を向けて足を止めた。だが、なかなか手を伸ばして本を取ろうしない。何か迷っているのだろうかと思い、彼女の傍に寄った。


 「本見つかったか?あ、この本なら知ってるぞ。これ、映画化するんだな。虹雫?」


 彼女は平積みの本を無言で見つめたまま動かなくなってしまった。
 剣杜は不思議に思い、彼女の顔を覗き込んだ。真っ白だった。いや、真っ青というのだろうか。先ほどまで頬を染めて幸せいっぱいの表情だった彼女の顔が、急変していた。何か怖いものを見たように、体も小刻みに震えていた。


 「おい、虹雫。どうした?体調悪くなったか?」
 「………」
 「虹雫?」
 「………あ、ご、ごめん。………ボーっとしちゃった」


 瞳を震わせた後、剣杜の声で気づいた虹雫はハッとした様子でこちらを見たが、動揺が隠せずにおろおろとその場で後ずさった。


 「ボーっとしたって、おまえ、顔色が悪いぞ」
 「……ごめん。本当に何でもないの。あ、本買わないと。買ってくるね」
 「いいから、俺が買ってくる。俺もこの本買うし。おまえ、そのベンチで待ってろ」
 「剣杜、その本買うの?」
 「え、あぁ。映画化ならおもしろんだろう?」



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