No one can find
第一章
高校生活。中学の頃は華やかで楽しいものだと思ってた。ふたを開けたら全くそんなことない。ただ学校に毎日行って、授業を受けて、部活に行って、勉強して、遅くに寝る。それをずっと繰り返す。2年の夏。中学の先生の圧で受けた県随一の進学校に行ったおかげで、この頃からもう進路のことでとやかく言われる。クラスメイトが次々に進学先や進路を決めていく中、わたしはいうと、全く決まっていない。やりたいことは大学に入ってから考えればいいと進路担当の先生には言われたけれど、結局は国立合格者を増やすため。無難な難関私立も滑り止めとして受けろとも言われた。
生徒のことを考えていると堂々と言う教師も、頭の中では自分のことしか考えていない。結局は学校側も何も考えていないのだと改めて思う。


そんなわたしでも好きなものがあった。それはサスペンスや推理小説。勉強が嫌になったとき、学校でイライラしたとき。女子高生は普通友達と遊んだり彼氏に会ったり、恋愛映画を見たり、流行りのバラードを聞いたりするのだろう。
しかし、わたしは推理小説の読むのがかなりのストレス解消だった。解決不可能だろうと思ってしまう事件も最後にはきれいに解決する。それがとても快感だった。わたしが好きなシリーズは、シャーロックホームズシリーズ。あの美しい世界観や登場人物がわたしのツボにはまった。
次第にホームズがただの憧れから、違う意味の憧れに変わっていった。


「夏季休業の課外は今日で最後になります。残りの休みも有意義に過ごしてください。お疲れさまでした。」
希望制の夏季課外。部活もあまりなくて暇だった私の唯一の暇つぶしの時間だった。
「七瀬、今から暇?」
「ん?なんで?」
「友達が、駅前のファミレスでバイトしててさあ、昼ご飯行かない?」
「あね、全然いいよ。」
友達の志穂が声をかけてきた。一緒に現国の課外を受けていたのだ。
昇降口に向かって歩く。その間に何となくスマホを見ていた。
好きな小説家の投稿だけを見る専用の垢。なんとなく投稿を眺めていると、1件のDМが届いていた。見る専の垢なのにどうして…。
DМを見ると、随分とご丁寧な字でこう書いてあった。
『ゆ。様 急なメッセージ、どうかお許しください。今回はゆ。様にとてもよいアルバイトがございまして、そちらをご案内に参りました。
簡潔に申しますと、アルバイト内容は、ある連続殺人事件の解決を行う、というもです。8月第2週目の1週間、泊まり込みで事件解決にあたっていただきます。もちろん1週間ずっと考えるというわけではありません。こちらで計画を立てておりますので、その計画に沿って行っていただきます。もちろん報酬もございます。時給ではなく日給という形をとらせていただくのですが、1日10万円、最大7日間ですので、10×7で70万円。事件解決の大きな手掛かりを見つけた場合はもちろんその金額にプラスされていきます。なので最低でも70万円、1週間で稼げるということです。アルバイトの主な説明はこれで以上になります。もし興味をお持ちいただけましたら、いつでもご連絡ください。』
その下には電話番号も送られていた。個人の携帯の番号ではなかったので、いたずらというわけではなさそうだ。
でも、殺人事件をどこかに泊まり込みで解決?それに報酬の額が半端じゃない。
いたずらにしては手が込んでいるし、いや、逆に手が込みすぎているのか?
わたしの頭の中は、この謎のメッセージのことでいっぱいになった。





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