溺愛プロデュース〜年下彼の誘惑〜

わかりやすいほど
弄ばれているのはバレているのに…

「わかりました…」

どうして私はまた
彼の呪文のような言葉を信じて
受け入れてしまうのだろう。

年下の彼に
私は翻弄されてばかりいる気がする―――


同じ週の休日
借りた部屋に荷物を運んで引っ越しが完了し
本格的に彼専属”モデル”の仕事が始動した…が。

「うーん…
 綺咲(きさき)さん、表情が硬すぎるよ。
 証明写真じゃないんだから
 もう少し動きのある自然体で出来ないかな」

「す、すみません…」

呆れたようにシャッターを押すカメラマンに
更に顔が強張ってしまう。

慣れるためにと言われ
1人撮影が増えて1週間が経過したけど
プレッシャーと細かい指示のおかげで
慣れどころか余計に緊張してしまい進歩なし。

「少し休憩にしよう。
 気持ち入れ直してきて」

「はい…」

言われて当然なだけに
気持ちに焦りと落ち込みが入り混じる。

「難しいなぁ…」

隅の椅子に腰掛け
お茶を飲みつつ笑顔の練習をしていると
スタジオの方から『宜しくお願いしまーす』と
元気な声が聞こえてきた。
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