世界でいちばん 不本意な「好き」
ずいぶん一方的だったと思う。あのあとの連絡だって避けちゃった。わたしが悪い。
わかってるけど、それでも、譲れない、揺るがない望みがある。
「ツキコ」
「……は、…」
突然名前を呼ばれて顔を上げると、桃花眼の目がこっちを強く見ていて、言おうと思った文句は飲み込む以外できなくなった。
右手をとられ、それがふみとの広い手のひらと重なる。
なにが起こるのか。なにをしようとしているのか。わけもわからずただその光景をなぞるように目で追った。
「「今幸せだって思えるのはきみがいるからだ。だから、その気持ちごと、きみを大切にしたい。これから先もずっと」」
あの映画の台詞を低い声がささやく。
「な、に……やめてよ急に、へんなこと…」
演技をしているのか、なんなのか。…だけど、吸い込まれそう。
まとう空気が天気の良い昼日中のようにあたたかい。
「こういうのに人一倍憧れてるのがアリスガワツキコなんだろ?」
かあっと顔が熱くなる。
手を振り払った表紙にお弁当がひっくり返った。
「あ、ごめん」
落としたのはわたしなのになぜかふみとが謝り、床に落ちたそれらを拾っていく。
「憧れてなんかない」
夢みてなんかいない。
そんな甘いものを望んでいるんじゃない。
正しいものが欲しい。
わたしにとって、正しいもの。
そこに憧れも夢もなくて、ただ、くるしまないためのひとつが、欲しいだけなんだよ。
「一番に好きでいてほしい、だっけ」
そうだよ。
とは、どうしてか言えなかった。
「そんな淋しくなるようなことにこだわるなよ」
その言葉に戸惑ってしまった。