世界でいちばん 不本意な「好き」


そのなかでいちいち順番をつけたりしないひと。ぜんぶ大事にしようとするひと。だけどひとりじめしようとするわけじゃなくて、みんなの好きなものにもなってくれるひと。

わたしの理想と正反対。


「ねえふみと、プールも好き?」

「なに、突然。好きだよ。水泳の授業、けっこう得意だった。おれが通ってた時は水泳あったんだよ」


無自覚に自分に自信があるから、わたしが気にすること、へいきで言っちゃう。9年もの差なんて感じたくないのに。


「わたしは苦手。小学生のときにした水中宝探し、こわかった」


ばら撒かれた嘘の宝石たち。

みんなが一斉に拾おうと潜りはじめて波が押し寄せてくる。


どれがいちばんきれいなのか、どれに手を伸ばしたら良いのかわからなくなって、そのうち波に捕まった。



「…アリス?」


艶やかな瞳が覗き込んできて、自分が俯いていたことに気づいた。


そういうのをいつも見つけてくる。

きっと宝探しも、自分が拾った宝石がいちばんきれいだと信じてしまえるひと。


心配そうにしてくる。

だけどね、わたし、今まではそんなに弱くなかったんだよ。



「海には行かない。散歩もやめる。もう帰る」



ふみとに出会って、
自分が、思ったよりずっとちっぽけで、しょうもなくて、弱くて、醜く強がっていることに、失望した。



「…なんで?」


掴んでくる手を、そっと外す。

見つめ返せば、黒い瞳に小さくわたしが映っていて、そこを睨んだ。


「わたしはふみとと一緒にいれない」


その瞳に映ることも恥ずかしいよ。

ふみとが今まで大切にしてきたものぜんぶに羨ましくなって、妬んで、帰る場所なんてなくなっちゃえばいいのにって思ってる。

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