世界でいちばん 不本意な「好き」


言われたとおり座ると、ふみとはリボンをほどいて、その中から小瓶を取り出した。


「ごめん。少し、触れるね」


左手を掬われる。

彼は小瓶からキャップを外して、その先でくすり指の爪を撫でた。


みどりと青が混ざったような、グリッターのネイルポリッシュ。


きらきらと光りを宿したその指は、さっきまでの重い痛みを和らげてく。


「…悩んでる理由は、これなんだろうなって思って」


心臓が、ふるえてる。



「無理しないで良い。だけど、アリスが自分で決めたことなら俺も大事に守っていきたい。応援したい。がんばっているなら、絶対に、だいじょうぶだって伝えたい」




──── このひとのことが、好き。


どうしようもなく。


意に反して、何よりも、誰よりも、わたしを明るく満たしてく。



「痛かったり疲れたら休んで良い。無理かもって思っても良い。本当にやめたくなったらやめても良い。だれかに思ってることを聞いてもらったって良いんだよ。それは逃げたことにはならないよ。だってがんばったんだからね」

「ふみと、だけど、わたし…」

「がんばっていたいなら、そうしたら良い。アリスなら続けられる。だけど自分のペースを保って、焦らずに、やりなよ。これはそれを少しだけでも後押しできるように、贈るよ」



それはまるで、魔法をプレゼントされたみたいだった。


雨なんて、降ってもいい。痛くてもいい。

明日は病院に行こう。
なるべく、病院に行こう。

元に戻せなくていい。

新しいこの指を、大切にしたい。



「ふみと、ありがとう。大事にする」


この光にふさわしいように。


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