世界でいちばん 不本意な「好き」


ひとりでいたら汐くんにもっと嫌なこと言ってた。自分のこと、また嫌いになってた。

借りがひとつ、アイドル様にできてしまった。


このままにしていたらもやもやしそう。

だから、仕方ない。不甲斐ない自分が悪い。


「…励くん先生にメッセージ入れます」

「え、なんて?」


陸上部は大会に向けていそがしいんだから、9年越しに戻ってきた同級生の面倒なんて見てられないでしょ。


「わたしが校舎案内しておくって」

癪だ。

へんなところを見られて、助けられて、…不本意。

関わりたくないって思っているのに。


「えっ、本当に!?やったー!」

「……」

「ありがとう、アリス」


ただの意地に対して、まるで心からうれしがっているかのような笑顔を向けられ、思わず視線をそらす。


演技。演技。きっとわたしと同じ。

……ああもう、とんだ災難だ。



幼稚園、小等部、中等部、高等部に大学とあって、学園の敷地はものすごく広い。

高等部だけでも覚えるまでに苦労した。


「わたしも高等部からチウガクに入ったから詳しくはないですよ」

「高等部と、あと必要そうな施設だけで充分だよ。今日の教室移動もすげー迷った」

「やたらと教室移動するんです」

「だよなー。俺がいたころは体育と音楽と実験くらいだったのになー」


やたらと教室移動するし、やたらと教えてくれる先生が変わる。

体育なんて器械体操の先生・水泳の先生・陸上の先生・球技の先生はそれぞれのスポーツでいたりする。名前覚えるのもひと苦労。音楽も歌の先生と楽器の先生で別にいるし…ほかの学校もそうなのかな。この学園では小、中から当たり前らしい。

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