死神さんは春になく
その日から少女は図書館に通い始めると同時に、桜に向かって話しかけるのが日課になった。



家族のこと。


友達のこと。


そして、図書館で読んだ物語のこと。



それは新緑のように眩しく、春の陽のように優しい夢のような時間だった。



勇者がお姫様を助ける冒険物語、煌めく宝石都市に訪れた旅人の物語、人魚姫がうたうと雪が降る物語――少女は花が綻ぶように語る。それは本当に幸せそうに。その姿を見ているだけで、こちらまで嬉しくなるような。



“死神さんはどんなお話が好き?わたしが好きなのはねえ、最後には死神さんが幸せになるお話”



僕は言葉を交わせない。


だから、聞くだけ。



それはいつしか少しずつ、僕の心に夜を連れて。



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