あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
それは私のデザイン画が紛失したと大騒ぎになったデザインと酷似していた。
「すごく似てる。翼……」
顔を合わせたみんなは同じことを考えていた。
——デザインを盗まれた
新ブランドのために毎晩遅くまでがんばって、やっと生まれたデザイン。
いくらたくさんのデザインの中の数点でも、私がデザインしたものには変わりない。
「shinobu akasaka」は赤坂先生がデザインしたものにだけにつくブランドだ。
私たちは一切このブランドに携われない。
そのため今までは「musee sinobu」というブランドのデザインをしていた。
もちろんミュゼなら問題ない……わけではないけど、ここまで大騒ぎはしなかった。
問題は赤坂先生が自分でデザインしたものではない、私たちのデザインをあたかも自分がデザインしたかのように「shinobu akasaka」として発表したことだ。
悪い言い方をすれば盗作だ。
憧れていた先生だけにその衝撃は大きかった。
どうしても先生の真意を聞きたく、私は直接先生に尋ねた。
だが返ってきた言葉は耳を疑うようなものだった。
「誰のおかげでここで仕事ができると思ってるの? それにあなたの名前じゃ売れないけど、私の名前なら売れるのよ」
自分がデザインを盗んだことを正当化させるような言葉だった。
しかもウェブサイトに新作の画像をアップしたところ皮肉にも多くの問い合わせがあったというのだ。
すると赤坂先生は
「次のコレクションも楽しみだわ」
とまるで次のデザインもよろしくと言っているようだった。
このまま私は先生のためだけにデザインし続けるの?
自分のブランドを持つ夢は?
頭が真っ白になった。
だが、ショックはそれだけではなかった。
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