あの夜身ごもったら、赤ちゃんごと御曹司に溺愛されています
「え?」
「現実を見てと言ってるのよ。どんなに思いあっても、ドラマや小説のようにはならないの」
私は逃げるように走った。
これ以上、自分の気持ちを表に出したらダメ。
苦しむのは自分が一番分かってるはずじゃない。
遠くから彼が私の名を呼んでいたが、私は走った。
幸いにも道は下り坂で、すぐに彼の別荘に着いた。
車に乗り込むと、急いでエンジンをかけ家に帰った。
泣くかなって思ったけど、涙は出なかった。
ただ、唇の感触が消えなくて、ずっとドキドキが止まらない。
キスをしたことを後悔してるかって?
わからない。
幸福感と罪悪感が同時にきちゃったんだもの……。
でも、明日からどうやって顔をあわせたらいいの?
「は〜あ。私のバカ」
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