帝王と私
「………」
「ごめんなさい…でも、結果的に傷つけたんだよね?私。貴将さんを…」
「弥生。
起きて?」
そう言われ起きると、彼に力強く抱き締められた。

「貴、将さん?」
「好きなんだ……弥生。
好きすぎて、どうしていいかわからない。
こんなに人を愛したの初めてだから……」
「うん」
「できることなら、このままここに閉じ込めて、誰にも見られないようにしてしまいたい……」
「うん」
「でも、できない。そんなこと……」
「うん」
彼は震えていた。
先程の妖しい恐ろしさではなく、ただ弱々しい。
消え入りそうな声だった。

「でも、私もできる限りのことしたい。貴将さんの為に……」
「じゃあ、弥生と一緒に住みたい。ここで」
「え?」
「もちろん、毎日確実に帰って来れないかもしれない。でも…できる限り、ここに帰るから………。
俺が帰ってきた時、確実に弥生にここにいてほしい」
「……いいよ」
「いいの?」
「うん…寂しくても、我慢する!貴将さんの為に」
「ありがとう!」
「うん!」

ベットに彼に後ろから抱き締められて座り、噛みつかれた手首を彼が手当てしてくれた。
そしてその手首をさすりながら、
「ごめんね……痛かったよね…?」
と苦しそうに言われた。
「ううん!大丈夫だよ?」
少しでも安心させたくて、できる限り明るく答えた。

「明日からここに帰ってきてね?引っ越しの荷物は部下にさせるから…」
「うん」
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