隣の部屋の新人くん
「俺のイメージだと、人事部採用係の岡本さんは、三年目で女三人で楽しそうにランチしにいくイメージだったんですよ」

そう言う坂口くんに、私はまた「残念だったね」と繰り返す。
電話でのイメージが相当良かったらしい。

「まあ、七年目で一人で牛丼食べてる岡本さんも好きですけどね」

そう言って坂口くんはやっと立ち上がった。
予想外の言葉に私は思わず坂口くんを見上げる。

「佳弥から返事来ないといいですね」

坂口くんは悪戯な笑みでそんなセリフを置いていくと、あっさりとテーブルを離れていった。

そんなにランチに女三人で行くような若いOLがいいなら、そういう人見つけて二人でたこ焼き食べてればいいのに。

そこまで思って、ムキになってる自分に気付く。

あれ?

水をごくりと飲み込む。

いろんな音が響き合う空間の中で、楽しそうな坂口くんの笑い声だけが澄んで私の耳にまで届く。

あれ?

もう一度、ほぼ水滴しかないコップの中の水を飲む。

私、どうしたんだろう。

坂口くんが心の隙間に入りかけていることに、気付いてしまった。
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