サッカー部のイケメン二人の間で揺れて
第一部 高校編
◎ 佐伯恭介との出会い -詩織-
「うわー、寝坊した! バスに乗り遅れちゃう」
私は急いで制服に着替え、慌てて家を飛び出した。
今日は朝から模試があるから遅刻できないのに。
休日なのに学校があることをお母さんに伝えていなかったから、
起こしてもらえなかった。
とにかく遅刻だけはできない。
バス停までダッシュしたけど、いつも同じバス停から乗る高校生が
誰も待っていない。
「バス、行っちゃったかぁ。どうしよう」
ここから歩くと学校まで20分以上かかるし、遅刻確定だよね。
模試の一教科受けられないかも。
はぁ~、困った。
次のバスが来るのは30分後。仕方なく学校まで歩くことにした。
足取り重く歩く私の横を、颯爽と風を切るように走り抜ける一台の自転車。
同じ高校の制服を着たその男の人は私を追い抜かす瞬間、
チラッと横目で私を見た。
目が合った。
「ちょっと待って!! そこの自転車!!」
私は咄嗟にその彼を呼び止めた。
キキキーッ
私の数メートル先で自転車の急ブレーキを掛けてその彼が止まり、私を振り返る。
「何っすか?」
「あの、並木西学園の方ですよね? その制服」
「はぁ、そうですけど」
「一生のお願い! 私を学校まで連れて行って下さい!」
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