テスター
あんなことがあったけれど、久典との関係は変わっていなかった。


むしろ、前よりも強固になった気がしている。


そしてもうひとつ、身の回りで変化したことがあった。


それは……。


「千紗、おはよう」


B組の教室に入って一番に声をかけてきたのは郁乃だ。


「おはよう郁乃」


同じ恐怖を経験したせいか、あたしと郁乃はクラスで一番の仲良しになっていたのだ。


あれだけ馬が合わないと思っていたから、自分の感情の変化に自分自身が一番驚いている。


「怪我、大丈夫?」


「うん。大丈夫だよ」


クラスメートたちはそんなあたしと郁乃を遠巻きに見つめている。


事件のことがあるから、なかなか話かけ辛いのだ。


特にあたしの場合は体の一部を切断されて顔が変化してしまった。


友人も目の前で2人失った。


そのショックが大きくて今まで学校を休んでいたのだ。


その間頻繁にメッセージをくれたのは郁乃と久典の2人だけだった。
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