テスター
そのときだった。


テスターの目がこちらを見た。


それは感情がなくとても冷たい視線で、体から体温が奪われていくような感覚がした。


「な、なに?」


恐る恐る訪ねると、テスターは壊れた機械のように「郁乃だって可愛い、郁乃だって可愛い、郁乃だって可愛い」と、連呼し始めたのだ。


狂気じみた雰囲気にゴクリと唾を飲み込んだ。


一体どうしたんだろう?


『可愛い』という言葉に過剰に反応するのはわかるけれど、自分のことを可愛いと言われてこんな風になるだろうか?


気持ち悪さを感じていてると、テスターはブツブツと呟きながら再びスマホをセットし始めたのだ。


まさか、またなにかする気じゃ……!


「や、やめなよ郁乃。これ以上なにかしたら、もうただじゃおかないよ!?」


震える声で言ったのは栞だった。


「そうだよ。あたしたちだってごまかせなくなるんだから、郁乃は犯罪者になっちゃうんだよ?」


智恵理も懸命に声をかける。


しかし、テスターはスマホを準備し終えると、あたしたち3人の前に立った。
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