規制アプリ
1時間も先生がいない時間が続くとなると、なにをされるかわからないということだ。


授業開始まであと5分。


今から保健室に行けば、休むことができるかもしれない。


そう思って席を立ったが、目の前に樹里が立っていて教室から出ることができなかった。


田中先生は自習と告げるとすぐに教室を出て行ってしまった。


「どこ行く気?」


樹里に聞かれてあたしは返事に詰まる。


完全に逃げるタイミングを失ってしまった。


みんなの視線が集まるが、それは好奇心に満ちていて、あたしを助けようとするものではなかった。


授業開始までまだ数分あるというのに、こんなときに限ってクラス全員が教室内にいる。


あたしは唾を飲み込んで樹里を見た。


一体なにをたくらんでいるんだろう?


そう思っていると蕾が鏡から顔を上げた。


「そうだ! 次の時間はみんなでしりとりしない!?」


突拍子のない提案に樹里を含めてみんなの目が点になっている。


まさかしりとりと言われるとは思っていなかった。


「ただし、普通のしりとりじゃないよ? 必ず亜里沙の悪口に結びつけること!」


蕾の言葉に樹里の顔に笑顔が広がっていく。


「面白そうじゃん」


普段あまり関われない一樹も乗り気だ。


他のクラスメートたちもざわつきながらも否定する子は一人もいない。


ただひとり、重行は青ざめたままうつむいているけれど。
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