規制アプリ
蕾に規制をかけた後はいつもどおりの毎日の始まりだ。


昨日から目の下のクマが気になっているから、珍しくコンシーラーをつけたりして調節する。


学校に到着して上履きを確認すると、今日はなにもされていなくてホッと胸をなでおろした。


同時にこれがイジメられっ子の日常なのだと思うと、胸に苦い気持ちが浮かんできた。


こんな風に毎日ドキドキ冷や冷やしながら過ごしているんだろう。


B組の教室に入るとみんなの視線が突き刺さる。


そしてささやき声と笑い声。


それはもしかしたらあたしとは関係のない世間話かもしれない。


それでもあたしには、すべてが自分へ向けられた言葉のような気がしてならなかった。


疑心暗鬼にさいなまれながら自分の席につくと、ちょうど樹里たちが登校してきた。


樹里の顔を見た瞬間心臓がドクンッとはねる。


動機がして、樹里の顔をまともに見ることができない。


胸の奥に黒い感情がわきあがり、それによってかすかな吐き気を感じた。


「ちょっと蕾、ノーメークとか冗談でしょう?」


樹里のそんな声が聞こえてきて、感じていた吐き気はスッと遠のいていった。


視線を向けると樹里がお腹を抱えて笑っていて、その後ろから蕾が教室に入ってきたところだった。


蕾は大きなマスクをつけて顔を隠しているけれど、眉毛がないことがわかった。
< 57 / 194 >

この作品をシェア

pagetop