記憶ゲーム
それは私が恋焦がれていた言葉だった。


『お父さん』


その言葉が聞きたいがために、私はアキナを探し続けてきたんだ。


「あ、アキナ……」


私はフラフラとした足取りで少女に近づいた。


この子がアキナじゃないことは十分に理解していたのに。


私が近づいてもちっとも恐れる様子を見せない少女を、私は力強く抱きしめた。


腕の中で少女が軽く息を吐き出す音が聞こえてきた。


肺が圧迫されたんだろう。


それでも私は力を緩めなかった。


「お父さん、どうしたの?」


そう聞いてくる少女を抱きしめ続けたのだった。
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