殺人感染
「お父さん、お母さん……」


呟くと一気に涙があふれてきた。


これほどまで両親を恋しいを思ったことは久しぶりのことだった。


あたしはまず両親へ簡単なメッセージを送信した。


自分は今学校にいて、ちゃんと生きているということだけは伝えておきたかった。


それから香の電話番号を出して電話をかけた。


出てくれるだろうか?


不安と期待が入り混じる。


しばらくコール音が聞こえてきていたが、不意に途切れた。


「香!?」


声をかけるが、電話の向こうからはなにも聞こえてこない。


「香、聞こえる?」


更に声をかけたそのときだった。


突然悲鳴が聞こえてきてあたしはスマホを取り落としていた。


続けて、落としたスマホから女の笑い声がここまで聞こえてくる。


なに……?


なにが起こっているのかわからないが、通常ではない状態であることは理解できた。


「香なの?」


スマホを手にとってもう1度声をかけたとき、通話はすでに切れてしまっていた。


「今のはなんなんだ?」


純也が不安そうな顔を浮かべて聞いてくる。


「わからない。でも、香の電話に誰かが出たことは確かだよ」


香は今1人じゃないということだ。


相手が仲間ならいいけれど、万が一殺人鬼だったら……。
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