殺人感染
あたしは画面から視線をそらして自分の胸に手を当てた。


落ち着くように深呼吸を繰り返す。


「外にも出て行ってるんだね……」


「そうみたいだな」


純也はうなづき、スマホをポケットにしまった。


殺人鬼が外にいるということは、学生以外にも被害者が多数いるということになる。


不意に両親の顔が浮かんできて不安にかられた。


両親とも今は仕事中のはずだけど、大丈夫だろうか。


連絡を取りたかったが、音を出すことはできないのでグッと我慢するしかなかった。


とにかくなにか武器を手にしてからだ。


「武器って、なにを用意するの?」


あたしは気を取り直してそう聞いた。


「なにか、長い棒がいいかな。モップとか、ホウキとか」


「それなかここにもあるね」


トイレの掃除道具入れを確認してみればいい。


「そうだな。あと重要なのは刃物だ」


純也の言葉にあたしは一瞬息を飲んだ。


刃物でなにをするのか、今までの話を聞いていたあたしはすぐに理解した。


「殺人鬼の耳のアザを切り取るの?」


「あぁ。簡単なことじゃないと思うけど、とにかくやってみる価値はあると思う」
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