棘甘王子に現行犯逮捕されちゃいました ゾルック 三人目


 

 お昼休み。

 私しかいない美術室。



 胸から上の石造様の前に、イーゼルを置いて。

 椅子に座り。


 雑念を振り払うように
 芯を長く尖らせた鉛筆を、走らせていると。




 ガラガラ。

 ドアが開く音が。




 ――あっ君?

 かすかな期待と共に、視線をドアに注ぐ。




 でも、私の目に映ったのは
 完全なる別人。




「鈴って、ほんと絵を描くのが好きだよな」


 期待外れの声に、
 がっかりのため息が漏れてしまう。




 そりゃ、そうだよね。

 あっ君が、私に会いに来るはずない。



 それなのに、
 こんな期待なんかしちゃって……


 バカみたいだよ…… 私……


< 146 / 227 >

この作品をシェア

pagetop