棘甘王子に現行犯逮捕されちゃいました ゾルック 三人目
お昼休み。
私しかいない美術室。
胸から上の石造様の前に、イーゼルを置いて。
椅子に座り。
雑念を振り払うように
芯を長く尖らせた鉛筆を、走らせていると。
ガラガラ。
ドアが開く音が。
――あっ君?
かすかな期待と共に、視線をドアに注ぐ。
でも、私の目に映ったのは
完全なる別人。
「鈴って、ほんと絵を描くのが好きだよな」
期待外れの声に、
がっかりのため息が漏れてしまう。
そりゃ、そうだよね。
あっ君が、私に会いに来るはずない。
それなのに、
こんな期待なんかしちゃって……
バカみたいだよ…… 私……