棘甘王子に現行犯逮捕されちゃいました ゾルック 三人目



 椿ちゃんの背中を押して、
 私から引き離そうとした瞬間。


『キャァァァァァ~~』


 会場中の至るところから、
 ファンの悲鳴が。




「ひゃっ!  レア、ミラクル!
 奇跡、奇跡!」



 椿ちゃんまで、私の背中をバンバン叩き

 平常心を保てないほど、取り乱し始め



「こっ、こんなこと……
 はっはっ、初めてなんだよ!」


 目を輝かせ、飛び跳ねている。




「初めてって?」

 何のこと?



「ゾルックメンバーが、ファンの間を通って
 握手会のテントに散るなんて。
 毎週ライブに通ってる私でも、
 初めてなんだから!」


 そうなんだね。


「私、氷牙様の近くに行ってくる!」



 気合で鼻を膨らませた椿ちゃんは、
 去って行って

 置き去りにされてしまった私。



 ――あっ君はどこだろう?



 広場を見回したけれど。
 
 ファンでごった返していて、
 あっ君を見つけられない。


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