棘甘王子に現行犯逮捕されちゃいました ゾルック 三人目
――握手会チケットも持ってないし。
会場の外で、
椿ちゃんを待っていようかな?
出口に向かおうと、
回れ右をして歩き始めたけど。
すぐに、私の足は固まってしまった。
だって、私に近づくように
「天音様~!」
ファンの歓声が、沸き起こっているから。
振り向くと……
ファンに揉みくちゃにされながら、
あっ君は私に近づいて来て。
私の前で、しゃがみ込んだと思ったら。
起き上がって。
私を見つめ、ニコっ。
ひゃっ///
な……なに?
あっ君の王子様級の笑顔と。
ファンの子たちの、
ライバルを睨みつける様な眼差し。
いろんな目で、360度から見つめられ。
オロオロと、
肩が震えてしまうんですけど。
あっ君は、とびきりの笑顔で
私に何かを差し出した。