棘甘王子に現行犯逮捕されちゃいました ゾルック 三人目
「綺月君。僕は寝たいから、静かにしてて」
「天音のお気に入りの子、りんりんだっけ?」
「綺月君はりんりんって呼ばないで。
本名は鈴(すず)だから」
「へ~。天音にも、
独占欲ってもんがあるんだな」
「俺と一緒じゃん」と
付け足した綺月君に
「嫉妬魔と一緒にしないで!」と
怒鳴り返す。
「天音なんて、天使と悪魔が混在した
トゲトゲ魔王のくせに」
「綺月君なんて、
嫉妬で大好きな子を縛り付けちゃう、
妖怪、バラのつるグルグル男なくせに」
「ほらほら、ケンカしないの。
お兄さんは
綺月と天音の、笑ってる顔が好きだなぁ」
前から飛んできた、千柳さんの穏やか声で
僕たちはプイッと、そっぽを向いたけれど。
お昼休みの
心のモヤモヤがへばり付いたままの僕は、
悩みを、ぼそっとこぼした。