想妖匣-ソウヨウハコ-

 麗達が教室を出て行ったから数分後、麗は授業が始まる少し前に戻ってきた。
 表情は嬉しそうではなく曇っている。その様子を目にし、秋はため気を吐き小さく舌打ちをした。
 麗に気づかれる前に目を逸らし、何事もなかったかのように窓を眺め授業が始まるのを待つ。
 そんな秋を麗は一瞬だけ見るが、すぐに逸らしてしまった。まるでその表情は、何か後悔しているような。それとも我慢しているような。複雑な表情だった。
< 3 / 66 >

この作品をシェア

pagetop