想妖匣-ソウヨウハコ-

「おかえり願えますか?」

 次の日の放課後。二人は昨日話していた、箱を開けてくれる小屋へ向かっていた。

 二人ともTシャツに七分丈のズボンと、動きやすい服を着用。背中には、少し小さめのリュックを背負っている。

 林の中は細道で、女子二人が横に並んでしまうと道が埋まってしまう。そのため、麗を先頭に二人は縦に並び歩いていた。

 今はまだ太陽が昇っているため明るいはずだが、周りに立っている木々が陽光を遮り薄暗い。風もなぜか冷たく感じ、二人は自身の腕を摩る。吹いている風が周りの木を揺らし自然の音を奏でていた。

 真っすぐ一本道なため迷う事はないと思いたいが、周りは全て同じ景色なため不安が二人の胸を占める。
 眉を下げ、麗の肩を掴んでいる秋は口元を震わせ話しかけた。

「……ねぇ、本当にこの道で合ってるの?」
「噂では林を真っ直ぐに行けば見えてくるって言ってたから、大丈夫だと思うけど……」

 自信なさげなその声に、秋も不安が込み上げてくる。何度も引き返そうと後ろを向くが、悩んでいるうちにもう林の外を見る事が出来ないほど進んでしまっていた。一人で戻る勇気もない秋は、震える麗の後ろ姿を付いていくしかない。だが、いくら進んでも周りは同じ光景。目的地に近付いているのかもわからない。それに加え、二人はいつもより感覚が敏感になっているため、小さい葉が重なり合う音だけでも肩を震わせ足を止めてしまう。

 二人は顔を見合わせつつも、ここまで来た意地が二人の足を進ませる。

 秋は前を進んでいる麗を見て、顔を俯かせてしまった。そして、気づかれないように舌打ちを零す。無意識に麗の肩を掴んでいる手に力が込められ、いきなり走った肩の痛みに麗は顔を歪めた。

「いっ! ど、どうしたの秋。痛いよ」
「っ、あ、ごめん…………」

 咄嗟に手を離し、瞬時に謝る。距離を取り、バツが悪そうに顔を逸らしたしまった。
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