俺が優しいと思うなよ?

冗談ではない。
これは愛の告白なんかじゃない。
男はジリジリと私へ顔を寄せてくる。
「お前じゃないとダメなんだ」
と、ドキッとする言葉を言われても、私の頭の中の警鐘は鳴り止まない。
「でも、私はもう…」
と、迫られる相手に首を横に振る。
男はじっと逸らすことなく私を見据えた。

「お前にとって決して悪い話じゃない。惚れたものは仕方ないんだ」
「だから、それは…」
「一瞬でも離したくない」

体がトロトロに甘く溶かされるセリフ。
切れ長の二重の瞳に見つめられ、鼻筋の通った顎のラインがスッキリとした黒髪の相手は、明らかに私とは別次元のイケメンの類だと思う。そんな男から投げかけられた甘い言葉なら、どんな女性も一瞬でメロメロにされるのも納得出来る。

しかしもう一度言うが、これは愛の告白ではない。これらの全ての甘い告白は、私、三波 聖(みなみ あきら)に対してではない。

「三波 聖の才能」に対してなのだ。

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