エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました
「ごめん、お姉ちゃん」
「私に謝ってどうするのよ。とりあえず、今夜は思い切り泣いて、ゆっくり休みなさい。明日は嫌でも会社で彼に会うんでしょう?」
「うん……」
そう。いくらマンションから逃げ帰って来たって、会社を休むわけにはいかない。
でも、一夜明けたからって大和さんと正面から話し合う自信はない。秘書としてベストな振舞いができる気もしない。
秘書であり妻でもあるという立場が、こんなふうに自分の首を絞めることになるとは思わなかった。
その夜は、姉がそのまま残してくれていた自分の部屋のベッドで寝た。といっても、横になるだけで眠気が訪れる気配はない。
その間、何度も枕元のスマホが震え、大和さんからの着信を知らせたが、私は無視し続けた。
振動が収まり、諦めたかなと思ったらまた震えて、次第に応答したくなっている自分に気付くと、その思いを振り切るように電源を切った。
自分の知らない間に離婚届を置いて出て行かれたら、誰だって驚くよね。
でも、大和さんの目を見て〝離婚しましょう〟なんて、言えそうになかったんだもの。もしも私を引き留める言葉が彼の口から出たら、二度と別れられなくなりそうなんだもの。
そんなことを考えていると、また勝手に目から涙が出てくる。
私はため息と寝返りを何度も繰り返しつつ、ひと晩じゅう今後の自分の身の振り方を考えた。