エリート御曹司の秘書兼、契約妻になりました

「もう寝るのか?」
「はい。その前にご挨拶をと思いまして」
「そう。じゃあ――」

 穏やかな声とともに、大きな手が私の顔を優しく引き寄せ、軽く唇同士が触れた。

 一秒にも満たないキスだったけれど、胸の鼓動は暴れ、頬がみるみる火照っていく。

「すっぴんだから、赤い顔をしているのがよくわかる。……かわいい」

 蕩けるような目をした彼にそんなことを囁かれ、私は心停止寸前。その場によろめいて倒れなかった自分を褒めてあげたい。

「おやすみ、叶未」
「お……おやすみ、なさい」

 私は放心状態でそれだけ言うと、フラフラと自分の部屋に向かう。室内に入るとそのままベッドに倒れ込み、無意識に手を伸ばして唇に触れた。

 夫婦になったんだもの。キスくらいする、よね……。

 それにしても大和さんの唇、やわらかかったな。たった一瞬のキスだったのに、思い出すだけで胸が苦しくなって、悶えるようにベッドの上をゴロゴロ転がる。

 どうしよう……大和さんが好きだ。片想いしていた時よりずっと。

 ファーストキスの破壊力はすさまじく、ギュッと目を閉じ眠ろうとしても、感情が昂ってなかなか寝付けなかった。

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