俺と妻と傷口
「はぁはぁ……。
華恋!!?」
「落ち着いて下さい!奥様は大丈夫です」
「そうか……よかったぁ」

「でも、お連れの方が………」
「は?」


ガチャ━━━━━
病室の中に入ると、華恋が城野の手を握りながら、泣いていた。

あの時と………
俺が胸を切りつけられ入院してた時と、同じだった━━━━


「華、恋…?」
「奏多……また私のせいで……人を傷つけちゃった…」
「……華恋?」
「城野さん、頭に大きな傷ついたの……。
奏多と同じ…一生治らない傷口…」
「ん……華…恋……ちゃ………」
「あ…城野さん!?」
「華、恋ちゃん…怪我……は?」
「大丈夫です…私は……。
ごめんなさい……私のせいで………」

全てあの時と同じだった………。
華恋を守った故の、大きな傷。
華恋の涙。
コイツも華恋を好きなこと。

やめろ………
やめてくれ━━━━━━━━
「華恋!!」
「え…奏多……?」
「帰ろ!?」
「え…でも……」

なんとなくだが、この後の展開が想像できるのだ。
早くここで二人を離さないと、何か嫌なことになりそうで………

怖かった………
華恋を取られそうで━━━━━



「ごめんね…奏多。
私、しばらく城野さんの傍にいたい………」

あぁ、やっぱりだ━━━━


俺から華恋が離れていく━━━━━
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